
近年「腸は第二の脳」「皮膚は第三の脳」という言葉に象徴されるように、脳と身体の相互作用が次々に明かされています。
こうした関係性は脳腸相関、脳膚相関と呼ばれていますが、当会は“脳節相関”という概念も提唱しています。すなわち脳と関節の相互作用です。
脳と関節の関係
「ウォーキングが
関節深部感覚(関節受容器)からのリズミカルな信号入力が引き込み(エントレインメント)という機序を経て脳を活性化させる。運動療法や体操療法の効果の裏には振動やゆらぎのようなリズム刺激が脳弾塑性を誘導するプロセスが隠れている。
脳は予測と修正を繰り返す高機能シュミレーションマシンであり、関節への極微タッピングは関節内圧へのリズミカルな内圧微変動をもたらすことで神経応答の改変に繋がる。これは内圧ノイズ印加による確率共振が神経回路の再編成(脳弾塑性の誘導)を促すことを含意する。確率共振についてはこちらのページ(外部サイト)を参照。
さらに脳と感覚受容器の関係性も極めて重要です。すなわち脳と五感入力の相補関係です。最新の研究で、ヒトの五感は単独に機能することはなく、異種感覚同士が互いに連携し合いながら機能していることが分かっています。
たとえば視覚を失った脳は、聴覚の働きを高めることで社会生活への適応を図ります。食べ物に対して美味しいと感じる感覚には、味覚と嗅覚の統合のみならず、視覚や触覚も関与します。料理は見て、嗅いで、咀嚼することで味わっているのです。当会は五感に替えて「互感」という表記を提唱すると同時に、脳と互感の密接な関係性を脳感相関と呼んでいます。
心身統合医療では、既述した脳腸相関、脳膚相関、脳節相関、脳感相関に加えて、“脳知相関”も重視します(下図)。


さて、ここからは脳の働きに少しだけフォーカスさせていただきます。
ヒトはストレスを受けると、自律神経が疲弊して代謝機能が低下します。さらに大量の情報にさらされると、脳の過負荷(オーバーロード)と呼ばれる状態に陥って脳疲労(または脳過労)を引き起こします。
過負荷(オーバーロード)
電気回路に定格以上の負荷が加わる現象を言う。昨今の認知科学では脳の神経回路に大量の信号が流れ込む際にも用いられる。
住宅設備の電気配線にオーバーロードが発生し過電流が生じると、配線がショートする。これを防ぐためにブレーカーが設置されている。ブレーカーが落ちることで電気回路が守られる。
実は人間もまったく同じ原理の機能(ブレーカー)を持っている。それがギックリ腰や寝違え、股関節や四十肩の激痛発作である。脳のオーバーロードが発生すると、神経回路を守るためにブレーカーが落ちる(激痛発作によって活動を一時停止させる)のである。これを痛みのソフト論と言う。
ブレーカーが故障している人間はうつ病や認知症のリスクが高くなる。

過労死の英語は“karoshi”であることに象徴されるように、先進諸国において過労死するのは日本人くらいだと言われています。そのため我が国は疲労研究において世界随一の成果を誇っています。
その一例として、仕事や運動などで感じる疲労感の正体は、実は肉体的な疲れではなく、自律神経の機能低下に伴う脳疲労であることを、世界に先駆けて突き止めています(筋肉疲労の乳酸説は誤りであったことが判明している)。
家事や仕事のハードワークで疲れるのは筋肉ではなく、脳なのです。
脳疲労に関わる臨床研究において、とくに憂慮すべき問題として“
こうした人々は自分は正常だ、健康そのものだという認識のもと、フルパワーで走り続けてしまうため、突然死のリスクが高まることが報告されているのです。
このように本当は疲れているのに全く疲れを感じない状態ー脳疲労(脳過労)のマスキングーは、突然死のみならず以下のようなリスクを抱えています。転倒による骨折、仕事上のケアレスミス、車の運転誤操作、脳卒中や心不全、がんの発見の遅れ、うつ病や認知症等々…。
臨床上、脳疲労(脳過労)のサインは多岐にわたり、運動器、循環器、消化器、精神機能に至るまで様々な次元に現れてきます。


パソコン作業中のミスタッチ、誤咬(口の中を咬んでしまう)、目のかすみやしょぼつきといった症状は脳疲労(脳過労)という言葉のイメージと大きくかけ離れていないため、比較的分かりやすいかもしれません。→関連リンク「物忘れやうっかりミスは脳疲労のせい? 専門家が教える意外な回避策」日経XTREND
しかしその一方で、上記に掲げた様々な症状については、既存の医学常識と照らし合わせても、「ええ?それも脳疲労なの?」と驚かれる方が多いのではないでしょうか。
しかし、実際には整形外科的な問題(慢性痛やフレイルなど)の裏にも脳疲労(脳過労)が潜んでおり、脳のレジリエンス(回復力)が痛みや筋協調性の改善をもたらすことが、当会の臨床研究によって示されています。
心身相関を考える上で、脳疲労(脳過労)のマスキングは極端な例ではありますが、これに近い状態として、脳疲労(脳過労)の程度に見合うサインが出ていない、すなわち脳疲労(脳過労)の強さと症状のあいだに乖離が見られるケースがあります。
これは脳と肉体がシンクロしていない、両者の間にねじれが生じている、心と肉体が嚙み合っていない状態です。
自分のイメージでは足をきちんと上げたつもりなのに、段差につまづいて転んでしまう…。アクセルとブレーキを踏み間違えてしまう…。食事で満腹になった際、胃からの信号が脳に届いているのに、意識は「まだ足りていない」と錯覚して食べ続けてしまう…。炎天下で肉体は水分を求めているのに、意識は喉の渇きを感じない…。
このように脳が肉体の状態を正確に捉えることができない状況は、病気の回復や予防を考える上で、いかに危険な状態であるかはお分かりいただけると思います。実は、こうした事態に陥っている人々が近年爆発的に増えているのです。
その詳しい理由は不明ですが、当会はその背景に
脳のオーバーロードは脳疲労(脳過労)を引き起こし、情報処理のエラーと共に脳と肉体の連係ミスを誘発させるのではないか。
その証左として、回復期リハビリテーションにオーバーロードの観点(重力負荷を軽減させるアプローチ)を融合させることで劇的な回復に繋がるケースがあります。
脳の情報処理エラーが常態化すると、肉体次元の病変と合致しない症状が現れます。たとえば神経痛の類とは無関係のしびれ(錯感覚)、感覚鈍麻、味覚障害、嗅覚障害、感覚過敏などに代表される
心身統合医療では、先に掲げた脳疲労(脳過労)が疑われる症状はもとより、マスキングの問題や感覚処理障害も対象となります。同時に、認知科学がもたらした新しい視点や情報を伝えることで、認知のアップデートを促すことが含意されます。
こうした統合療法によって脳と肉体の連係が回復すると、自身の体調変化をきちんと感じることができるようになり、しかるべきタイミングで適切な休息が取れるようになります。心身のメンテナンスに対する意識が高まることで、万が一重篤な疾患にかかったとしても、手遅れにならないタイミングで病院に行ける可能性が高まります。
このようにヘルスケアにおけるタイミングの適正化が為されることで、ウェルビーングの向上につながります。
心身統合療法というカテゴリーには様々な方法論、アプローチが存在しますが、当会は個人差の次元を重視する施術体系-これを相対医学と言う-を推奨しています。
個々の特性を見極めてオーダーメイドされる施術体系として、BFI(脳と手指をつなぐ技術)や
医療相談(ヘルスリテラシーを高めたい方へ)
お電話またはオンライン(ZOOM)でご相談ください(有料サービスとなります)。
例)「CRPS(RSD)の治療で悩んでいる。どうしたらいい?」
「心身統合療法について詳しく教えて欲しい」