さりげなくソフトなサインを出したい

 米国から輸入された柔軟剤「ダウニー」のブーム以降、香害に苦しむ人が増えています。寿司屋での香水はNGというのは常識ですが、TPOに関係なく「衣類から発せられる過剰な香りもNGだ」という社会認識はいまだ醸成されておりません。

 「セクハラ、パワハラ、モラハラ、スモハラ」にあっては、こうした概念が生まれる以前まで当事者らに相応の自覚はありませんでした。現在のスメル・ハラスメント(スメハラ)も同様であり、多くの人々に自分が当事者になっている自覚はありません

 受け取る側の体質をことさら強調して、「神経質だから、敏感過ぎるから」とか、そうした理由による“スメハラの正当化”はおそらく受け入れられないでしょう。「セクハラ・パワハラ・モラハラ・スモハラ」がそうであったように。

 こうした背景を踏まえ、今後スメハラにおいても、ある程度の社会問題として広く認知されていくのではないかと…。

 ところで「セクハラ・パワハラ・モラハラ・スモハラ」は、今なお社会生活に潜んでおり、なかには自覚に乏しい人もおられるようです。

 そうした人にさりげなく気づいてもらう方策のひとつとして、当会は以下のような造語を提起します。

 セクハラをしている人➡セクラー
 「パワハラをしている人➡パワラー
 「モラハラをしている人➡モララー

 スモハラをしている人➡スモラー

 そして、悪気なく意図せず自分が香害の発生源になってしまっている人、すなわちスメハラをしている人に対しても同様に…。

スメハラをしている人➡スメラー

 さらにこちらのページで紹介しているとおり、ソーシャル・ボイス・ディスタンスを守らない行為はボイス・ボリューム・ハラスメント略して「ボイハラ」であり、この当事者(加害者)を「ボイラー」と言います。

 ただハラスメントを行っている人たちの中には、甚だ自覚に乏しいケースがあるわけで…、そうした方々に「気づいてください」というサインを出すとき、どうすればいいのか?

 当事者との関係性において特段の配慮が求められるシーンでは、なるべくソフトに伝えたいわけで…。  

想定される実際の使い方~スメラー編~

 たとえばレストランで食事をしているとき、隣りの席に座った人の柔軟剤のニオイがきつくて、せっかくの料理が台無しになっている場面。

 我慢の限界…、ついには耐えらなくなって、席の移動を決意した際、店員を呼んでどのように伝えるべきか?

 理由を告げずに、「あちらの席に移りたいのですがよろしいですか?」という方法が一般的だと思われますが、お店によっては快く対応してもらえない場合があります。

 であれば、やはりその理由を伝えたほうが、客の思いを店員が理解することで、よりスムーズな対応に繋がる可能性が。

 では、どのような伝え方が想定されるでしょうか?「隣りの方の柔軟剤のニオイがきついので、席を移りたいんですけど」あるいは「隣りの香害に耐えられないので席の移動をお願いします」という物言いはアリ?

 これを耳にした隣りの人物(スメラー)はどう思うでしょうか?場合によっては自分のことを言われたと気づかない、あるいは会話に夢中で聴こえないケースもあるでしょうけれど、聴こえてしまう可能性も十分あるわけで…。

 こうしたストレートな物言いは店内に気まずい空気が漂う恐れがあって、贅沢で優雅な気分が損なわれるかもしれません。

 一方、「すみません、どなかは分かりませんがスメラーの方がいらっしゃるみたいで…、できれば席を移動したいのですが」という表現ならどうでしょう?

 「隣りの人」「柔軟剤」「ニオイ」といった言葉を一切使っていない分、場の空気の悪化を多少なりとも抑制する効果が期待できます。ちなみに香害の原因が香水やオーデコロンの場合も同様に使えます。

 今後スメラーという用語がどの程度広まるのかといった次元にも拠りますが、それなりにオブラートに包んだ表現ですので、角が立つリスクは若干抑えられるのでは?もっとも勘のいい当事者であれば、スメラーという言葉の意味が分からなくとも、何かを察する可能性はありますが…。

 ほとんどの店員さんがスメラーという用語を知らない状況では、すぐに「あっ、香害(スメルハラスメント)のことだな」とはいかないでしょうけれども、少なくとも目の前の客が「何かに困って席を移動したがっているのだな」と察することは可能でしょう。

 そして席を移動したあとに、「隣りの人の柔軟剤(または香水)がきつくて、ごめんなさいね」と店員に説明し直せばいいわけです。

 ただし、この手法には当記事の本来の趣旨が含まれておりません。「スメラーに自覚を促す」という視点です

 公共の場で、赤の他人に自覚を促す、しかもさりげなくソフトなサインを出すというのは、実際かなりハードルが高いと言えます。口論や諍いに発展しかねないですし、場合によってはリアルなケンカになってしまう懸念も…。

 今回ご紹介した方法(店員へのソフトな伝え方)では、おそらくお隣さんが明確な自覚を持つに至る可能性は低いでしょう。

 ですが、社会全体がスメルハラスメントという言葉を共有する時代になり、同時にスメラーという言葉も認知されるようになれば、「あれ?今の、もしかして自分のこと?」と察することで、自覚の萌芽となり得るのではないでしょうか。

 もちろん、相手との関係性において相応の信頼関係が成立しているのであれば、直截的な表現が許されるケースもあるでしょう。

想定される実際の使い方~モララー編~

 家族ぐるみでの付き合いがある夫婦同士。4人そろってカフェでランチをしている場面。奥さん二人(A子さんとB子さん)は地元の手芸サークルの仲間で、ふだんから互いの悩みを打ち明ける関係。

 A子さんの夫はコロナ禍になって以降、仕事のストレスが増えたのをきっかけに、奥様にモラハラをするようになっていました。つまりA子さんは現在モラハラを受けています。そのことを知ったB子さんは自分の夫と相談して、ある作戦を実行することにしました。

 A子さんの夫は自分がモラハラをしているという自覚がありません。そこで、何とかして気づいてもらおうとする作戦です。

 そこでランチに誘って、さりげなく「あなたは今モラハラをしていますよ」と伝えるべく、B子さんの夫が一芝居打つことになりました。

 『この前、赴任したばかりの支店長(上司)が、噂には聞いていたけど、けっこうなパワラーだったんすよ。

 ぼくはまだ被害を受けていないけど、同僚がターゲットになっちゃいましてねえ、家内に「ホントに気の毒としか言いようがないよ」みたいなことを言ったら、「あら、あなただって、人のこと言えないでしょ、あなたも以前は立派なモララーだったんだから…、忘れたとは言わせないからね」なんて言われちゃいましてね、とんだやぶへびでしたあ、言わなきゃ良かった(笑)。

 でも、夫婦関係ってむつかしいですよね。あのときの私はまさか自分がモララーになっているなんて夢にも思ってませんでしたから。でも、私ら夫婦もいろいろありましてね…。今となっては、たしかにあのときの自分は完全にモララーだったなあって、つくづく反省してます』

 このような話を聞かされたA子さんの夫は、その場では他人事のように聞いていましたが、帰宅後にA子さんから「今日のあの話…、あなたはどう思った?」と、夫が少しでも察してくれることを願いつつ…。

 このあと、実際にA子さんの夫がどのような気づきに至るのかは、ここでは描きませんが、この一連の会話の中に、パワハラ(パワーハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)という、リアルな言葉が一度も出てこなかったこと、お気づきでしょうか。

 直接的な表現というものは相手を追い詰める危険があり、また会話の雰囲気が重たいものになりがちですが、パワラーとか、モララーといった表現に代替することで、だいぶ柔らかい感じになることがお分かりいただけると思います。

 もちろん使い方を誤れば、単なる誹謗中傷になってしまうので、そのあたりは気をつける必要があるわけですが、それはどんな言葉であれ、基本的に同じですので…。

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認知科学統合アプローチ(COSIA)は「認知科学と医療の融合」を表す概念であり、その起源は運動器プライマリケアにおける疼痛管理にあります。

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